長く働いたご褒美?(年金の長期特例制度)

老齢厚生年金や退職共済年金には、長期特例という制度があります

最近は、定年制度の延長や再雇用で、65歳くらいまでは働くことが当たり前になってきていて、在職老齢年金の停止制度や長期特例制度に関するご相談も増えています。

65歳前の特別支給の老齢厚生年金には報酬比例部分(お給料やボーナスをもとに計算した部分)と定額部分(年金に加入した月数をもとに計算した部分)がありますが、受給開始年齢の引き上げの経過措置により昭和24年4月2日以降に生まれた男性と、昭和29年4月2日以降に生まれた女性からは定額部分の支給がありません。

でも、44年(528月)以上の厚生年金あるいは共済組合に加入した期間があると、特別にこの定額部分を受給できるようになっているのです。

中学校や高校を卒業してからすぐに就職し、ずっと働いて厚生年金や共済組合に加入してきた方が、この特例制度に該当すると、65歳前から特別に定額部分(およそ65歳以降の基礎年金に相当する年金額78万円)が受給できます。さらに加給年金対象の配偶者がいると、本来は65歳になったときからの加給年金(およそ年額39万円も一緒にもらえます。

長期特例制度に該当するには、特別支給の老齢厚生年金の受給権が発生する年齢に達していて、さらに厚生年金あるいは共済組合の加入期間だけで44年528月)以上年金加入期間あることが条件です。一元化後も厚生年金と共済組合の加入年数を足し合わせることは出来ず、どちらか単独で44年を満たさなければなりません。

ただし、長期特例制度で年金を受給するには、厚生年金あるいは共済組合の加入をやめて、社会保険から外れなければならないことになっています。

社会保険から外れるということは、つまりは退職するか、社会保険をかけなくて良いくらい勤務時間を短くしてパートタイマーになるということです。

その場合、在職老齢年金制度で停止がかかっていた年金も解除になり受給額も増えますが、退職すると給料はなくなってしまいますし、パートタイマーで働いたとしても、給料はかなり減ってしまいます。

当然のことながら、健康保険は全額負担、扶養家族の健康保険料も支払うこともありえます。60歳前の国民年金第3号被保険者の妻(夫)がいると、国民年金保険料の支払いも発生します。厚生年金は70歳になるまで加入ですので、厚生年金の報酬比例部分の額をもっと増やしたくともそこで打ち止めになってしまいます。

また、退職した後、せっかく雇用保険をかけたのだから失業給付の基本手当を受給しなくてはと、ハローワークに求職の申込みに行ったような場合、65歳前は基本手当優先です。厚生年金は求職の申込みをした翌月から基本手当をもらっている間は、自動的に支給停止になってしまいます。離職票をもらったら、ハローワークに行って求職の申込みをする前に基本手当日額の試算だけをしてもらい、厚生年金の日額と比べてどちらを受給するのか選ぶという方法もあります。ただ、老齢厚生年金は課税対象ですが、基本手当には税金がかかりません。

せっかくの長期特例制度、それぞれご自身のライフプランに合わせて、活用されるといいですね。